■ 亡き母の段ボールから始まった歴史の救出
亡き母が遺した段ボール一箱分の古い写真。そこには家族の歩みだけでなく、商売人だった父の店、その構えや、当時の街の活気が詰まっていました。これらの記録を「URLで案内できる真実」として地図というキャンバスに正しく配置し、後世に遺す。それが「歴史地図アトラス:タイムトラベル」プロジェクトです。
■ 白岩の格闘と、実務上の判断
寒河江市白岩(しらいわ)エリアの手書き詳細図面をQGISで現代地図に重ねる作業は、難易度が高すぎました。寒河江市内の「親父の店界隈」の手書き地図は、直線的な道が多いため比較的合わせやすかったものの、地形の複雑な白岩では数ミリ単位の重なりが厚くなり、ピタリと合わせることは困難でした。

そこで、手書きの合わせは諦めて、白岩を通っていた山形交通 三山線を描いてみることにしました。
■ 国土地理院地図でのトレース実務
国土地理院地図のプラットフォームを用い、以下の一次資料をガイドにGeoJSONデータを作成しました。
- 路線図のタイル化: 山形交通三山線(ryoa.sakura.ne.jp)の路線図をXYZタイル化して読み込み、大枠のガイドに使用。

- 1961年~1969年の空中写真による修正: 現役当時の路盤を直接視認し、羽前高松から白岩へ続くラインをトレース。

- 1974年~1978年の空中写真による補完: 1961-69年のデータがない地域(間沢付近)については、廃止直後の写真に切り替えて、建物の下に飲み込まれる前の記憶を掘り起こしました。

■ 現代の地図と重なる「鉄路の記憶」
完成した


GeoJSONを現代のGoogle Mapsに重ねると、重要な事実が浮かび上がりました。西川町海味(かいしゅう)付近の廃線跡は、現在**「さくらんぼサイクリングロード」**として活用されています。かつての鉄路の曲線が、形を変えて現代のレクリエーションの道として息づいていることが、Googleマップのタイルと重ねることで証明されました。

■ 地点登録:100歳の証人「モハ103形」
今回の実務では、三山線の魂とも言える地点を登録しました。西川町睦合の廃線跡からほど近い**「月山の酒蔵資料館(設楽酒造店)」**です。ここには、かつてこの鉄路を走っていた大正生まれの木造単車「モハ103形」が現存しています。

■ 引用・参照した一次資料および取材記録
- DRFC-OB デジタル青信号「廃止直前の山形交通」
- 廃線後の取材記録 山形交通 三山線(1926~1974)
- 山形交通三山線廃線跡(YouTube動画 2018/07/20)
- 山形交通三山線:Wikipedia
■ 結び
亡き母の段ボールから始まった歴史の救出は、空中写真とGeoJSON、そして現存する車両という「事実」を繋ぐことで、一つの形となりました。白岩の手書きの合わせは諦めて、三山線という確かな一本の線を引くこと。この事実に裏打ちされた「歴史地図アトラス」は、これからも進化を続けていきます。


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